(十日の続き) 近頃、予の心の最ものんきなのは、社の往復の電車の中ばかりだ。 家にいると、ただ、もう、何のことはなく、何かしなければならぬよう な気がする。 「何か」とは困ったものだ。読むことか? 書くことか? どちらでも ないらしい。否、読むことも書くことも、その「何か」のうちの一部分 にしか過ぎぬようだ。読む、書く、というほかに、何の私のすること があるか? それは分からぬ。が、とにかく何かをしなければなら ぬような気がして、どんなのんきなことを考えている時でも、しょっ ちゅう後ろから「何か」に追っか ...