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その6 石川啄木 ローマ字日記 Part6

(十日の続き)

近頃、予の心の最ものんきなのは、社の往復の電車の中ばかりだ。

家にいると、ただ、もう、何のことはなく、何かしなければならぬよう

な気がする。

「何か」とは困ったものだ。読むことか? 書くことか? どちらでも

ないらしい。否、読むことも書くことも、その「何か」のうちの一部分

にしか過ぎぬようだ。読む、書く、というほかに、何の私のすること

があるか? それは分からぬ。が、とにかく何かをしなければなら

ぬような気がして、どんなのんきなことを考えている時でも、しょっ

ちゅう後ろから「何か」に追っかけられているような気持ちだ。それ

でいて、何にも手につかぬ。

社にいると、早く時間が経てばよいと思っている。それが、別に

仕事がいやなのでもなく、あたりのことが不愉快なためでもない。

早く帰って「何か」しなければならぬような気に追ったてられている

のだ。何をすればよいのか分からぬが、とにかく「何かしなければ

ならぬ」という気に、後ろから追ったてられているのだ。

風物の移り変わりが鋭く感じられる。花を見ると、「あー花が咲い

た」ということ――その単純なことが矢のように鋭く感じられる。それ

がまたみるみる開いてゆくようで、見てるうちに散るときが来そうに

思われる。何を見ても、何を聞いても、予の心はまるで急流に臨ん

でいるようで、ちっとも静かでない、落ち着いていない。後ろから押

されるのか、前から引っ張られるのか、何にしろ予の心は静かに立

っていられない、駆け出さねばならぬような気持ちだ。

そんなら予の求めているものは何だろう? 名? でもない、事業?

でもない、恋? でもない、知識? でもない。そんなら金? 金も

そうだ。しかしそれは目的ではなくて手段だ。予の心の底から求めて

いるものは、安心だ、きっとそうだ!

つまり疲れたのだろう!

去年の暮れから予の心に起こった一種の革命は、非常な勢いで

進行した。予はこの百日の間を、これという敵は眼の前にいなかった

にかかわらず、常に武装して過ごした。誰彼の区別なく、人は皆敵

にみえた。予は、一番親しい人から順々に、知ってる限りの人を残ら

ず殺してしまいたく思ったこともあった。親しければ親しいだけ、その

人が憎かった。「すべて新しく、」それが予の一日一日を支配した「新

しい」希望であった。予の「新しい世界」は、即ち、「強者――『強きも

の』――の世界」であった。

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いやー、ほんと啄木の時代に今の僕が金田一君の位置取りでいたらなぁーと

強く思います。こんなひねくれ者の「安心」。すごいカウンセラーとしてチャレン

ジングですよねw

僕は不安を取り除く専門家になる。今の時点でも我流だけどそれができる。

だから、啄木の時代に僕がいたら、ディベートしてみたかったですね。

僕は元々ディベータ―なので、かなり楽しいバトルができそうな気がする。

お互い一歩も引かないでしょうしね。

ただ、彼の望む安心、それが何だったのかは定かではないですね。単純に

安心を求める人が派手に女遊びしたり、借金三昧で浪費する。そんな事

しない気がします。安心を求める自分と破壊を求める自分、多分両方

いたのでしょうね。であれば僕もまさにそうなので、強く共鳴するし、

いい同士になれた気がする。

とはいえ、「借金はするな。身の丈で遊べ。」と会うたびに説教していた

でしょうがw

最後の部分の「革命」、これは今年の僕にもまさに起きたのですが、

革命の内容は真逆に近いですね。彼の革命は「破壊」に向かい、

僕の革命は「生産」に向かってる。そういう意味では僕はラッキーでした。

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