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その18 石川啄木 ローマ字日記 Part18

二十四日 土曜日

晴れた日ではあったが、北風は吹いて寒暖計は六十二度八分しか

昇らなかった。

「スバル」の募集の歌「秋」六百九十八首中から、午前のうちに四十首

だけ選んだ。社に行く時それと昨夜の「莫復問七十首」とを平出君の

ところに置いて行った。

今日の記事の中に練習艦隊太平洋横断の通信があった。その中に

春季皇霊祭の朝、艦員皆甲板に出て西の空を望んで皇霊を拝したと

いうことがあった。耳の聞えない老小説家の三島じいさん、「西の空で

は日本の方角ではない」と言って頑としてきかなかった。それから前川

じいさんは昨日無断欠勤したというので、加藤「ラウンド・アイズ」と喧嘩

していたっけ。この人は予の父に似た人なのだ。病むと聞き癒えしと聞

きて四百里のこなたに我はうつつなかりし

少し遅くなって帰った。机の上には原稿紙の上に手紙らしいもの・・・

胸を躍らして電灯のネジをひねると、それは札幌の橘智恵子さんから!

退院の知らせのハガキをもらってから予はまだ返事を出さずにいたった

のだ。「函館にてお目にかかりしは僅かの間に候いしがお忘れもなくお

手紙・・・お嬉しく」と書いてある。「この頃は外を散歩するくらいに相成候」

と書いてある。「昔偲ばれ候」と書いてある。そして「お暇あらばハガキなり

とも」と書いてある。

金田一君が入ってきた。今日のレクチュアの成績がよかったとみえて

ニコニコしている。話はいろいろであったが、友の眼の予に語るところは、

「創作をやれ」ということであった。「足跡の後を書け」と言った。そして一

ヶ月前の予の興奮時代を駆っ立てその眼は予の現在の深き興味を失った

気持ちを責むるごとくであった。予は言った。

「だが、金田一さん、俺だってすぐ貴方の希望に沿い度い・・・が、俺には今

敵がなくなった! どうも張り合いがない。」
「敵! そうですねえ!」
「あの頃の敵は太田君だった。実際です。」
「そうでしたねえ!」
「大田と俺の取引きは案外早く終ってしまった。
『二元、二元、猶説き得ずば三元を樹つる意気込み、賢き友かな』
私はこの歌を作るとき誰を思い浮かべたと思います? 上田さんと、それ

から太田君です。まだこの外にも太田に対する思想上の絶交状を意味する

歌を三つ四つ作りましたよ。」
「つまり、もう太田君を棄てたんですか?」
「敵ではなくなったんです。だから俺はこうガッカリしてしまったんです。敵!

敵! オーソリティのない時代には強い敵がなくちゃダメですよ。そこへ

行くと独歩なんかはえらい、実にえらい。」
こんな話も、しかし、予の心臓に少しの鼓動をも起さなかった。

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やっぱり啄木って上から目線なんだなぁ・・・つくづくそう思います。今日の

日記を読んでると、金田一君はどうやら啄木の才能を純粋に愛でている

ように見えますね。だから帰ってこない金を平気で貸すのか、それにして

も器がでかい。。。そう思いました。

僕は帰ってこないと分かってる金は貸せないですね。。。まあ金田一君

の目には将来大成する啄木が見えていて、「出世払い」でいい、と思って

いたのかもしれませんが。仮にそうだとしても、僕はやっぱり貸せない、

そう思います。

あと、敵がいないから張り合いがない、と言う感じの事を書いていますが、

外にいなければ昨日の自分を敵にすればよいのに、と思いました。そう

すればいつもほとんど同じ能力のライバルがいるわけですから、日々

いい勝負ができると思います。まあ、そもそも張り合うこと自体が無駄だと

思うので、敵なんかいらないと思いますけどねw

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