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その21 石川啄木 ローマ字日記 Part21

二十七日 火曜日
ハッと驚いて眼をさますと枕元におきよが立っていた。泣きたい位眠いのを

我慢してハネ起きた。曇った日。

昨夜のことがつまびらかに思い出された。予がおえんという女と寝たのも

事実だ。その時何の愉快をも感じなかったのも事実だ。再び予があの部屋に

入って行った時、たまちゃんの頬に微かに紅を潮ちょうしていたのも事実だ。

そして金田一君が帰りの道すがら、ついにあの女と寝ず、ただ生まれて初めて

女とキッスしただけだと言ったのも事実だ。その道すがら、予は非常に酔った

ようなふりをして、襲い来る恐ろしい悲しみから逃げていたのも事実ならば、

その心の底のなるべく手を触れずにそっとしておきたかった悲しみが、三円

の金を空しく使ったということであったのも事実だ。

そして今朝予は、今後決して女のために金と時間を費やすまいと思った。

つまり仮面だ。

社に行っても四時頃まで予は何となく不安を感じていた。それは来月分の

二十五円を前借しようしようと思って、下まで行きながら言い出しかねていた

からだ。四時には社の金庫が閉まる。カン、カン・・・と頭の上の時計が四時を

打った時、予はホッと息をついて安心した。

原稿紙を延べて心を鎮めていると窓ガラスにチラリと赤い影が映った。と同時

に半鐘の音。八時ごろであった。窓から真向かいの小石川に火事が起ったのだ。

火は勢いよく燃え、どことなく町の底が騒がしくなった。火! 予は近頃にない

快いものを見るように窓を開け放して眺めた。

九時半頃電話口へ呼び出された。相手は金田一君。中島君等と日本橋の

松花亭という料理屋に来ているが、来ないかという。早速出かけた。

四十分も電車に揺られて目指す家に行くと、男四人に若い芸者一人、鼻の

内山が柄にない声を出して新内か何かを歌っていた。

一時間ばかり経ってそこを出、金田一君と二人電車に乗って帰ってきた。

二十八日 水曜日
崖下の家では幟を立てた。若葉の風が風車を廻し、鯉と吹き流しを葉桜の

上に泳がせている。

早く起きて、麻布霞町に佐藤氏を訪ね、来月分の月給前借のことを頼んだ。

今月はダメだから来月のはじめ迄待ってくれとのことであった。電車の往復、

どこもかしこも若葉の色が眼を射る。夏だ!

社に行って何の変ったことなし。昨夜最後の一円を不意の宴会に使ってし

まって、今日はまた財布の中にひしゃげた五厘銅貨が一枚。

明日の電車賃もない。

二十九日 木曜日
休むことにした。そして小説「底」を書き始めた。十二時過ぎても出かけない

ので金田一君が来た。

「あなた、電車賃がなくってお出かけにならないのじゃありませんか?」
「いいえ、それもそうですが・・・許して下さい。今日はバカに興が湧いてきたん

です。」
「そうですか! そんなら折角。」
こう言って友は出て行った。
午後二時間ばかり佐藤衣川に邪魔せられたほか、予は休みなくペンを動か

した。
そして夜は金田一君の部屋で送った。

三十日 金曜日
今日は社に行っても煙草代が払えぬ。前借は明日にならなくてはダメだ。

家にいると晦日だから下からの談判が怖い。どうしようかと迷った末、やはり

休むことにした。
「底」を第三回まで書いた。
この頃すみちゃんという背の低い女の子が来た。年は十七だというが、身体

は十四位にしか見えぬ。この女が昨夜ちょっと家へ行って母親に叱られ、兄に

何とか言われて飛び出し、死ぬつもりで品川の海岸まで行ったが、とうとう

死なずに一人帰って来たという。ここまで来た時は三時半頃だったという。

恐ろしい意志の強い、こましゃくれた、そのくせ可愛い女だ。「おきよさんは

可愛い娘ね」と自分より年上の女中のことを言う。「それ何だっけ・・・おつねさん

か! あの人の顔はこんな風だわね、」とヒョットコの真似をしてみせる。

夜になると果たして催促が来た。明日の晩まで待たせることにする。
九時頃金田一君が二円五十銭貸してくれた。そのときから興が去った。寝て、

枕の上で、二葉亭訳のツルゲーネフの「ルーヂン」を読む。
深い感慨を抱いて眠った。

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一気に4日進めましたが、この4日の日記を一言で表すと「借金日記」ですね。。。

興味がわいたので、明治40年代の物価を調べてみました。お米が当時10kg約

1円。今が約5000円ですから、つまり1円の価値は当時5000倍程度。

とすると、啄木が26日に浅草で女を買った3円は15000円。まあ今も昔も相場は

あまり変わらないようですね。それにして、15000円あれば質から時計を取り戻

せただろうに。。。

来月の給料から25円、つまり12万5000円分前借しようとした。。。

もし、啄木が今の世に生きていたら、確実にファクタリングして、来月の給料が

消えているのでしょうね。まあ不自由な明治末期でよかったと思います。

火事が快いものを・・・というのは、まあいわゆる「他人の不幸は蜜の味」という

やつですね。ニュースでもよく悲劇的なライブ映像を流しますけど、ほんとあれ

が人の本質を表していると思います。率が上がるから映しているわけで。

個人的にはああいうライブ映像は単に時間の無駄だと思います。その時間が

あれば、率が上がらずとももっと日本の政治や世界の政治にフォーカスした

方がよいのでは、と思うのですが、まあマスコミが人気商売である以上、それは

無理ですね。僕がスポンサーシップをうまく使えるようになったら、Youtubeか

何らかのWebプラットフォームで、「政治専用チャンネル」「心理学専用チャンネル」

を立ち上げたいと思っています。少なくとも心理学専用チャンネルは立ち上げます。

27日の夜、金田一君に「今飲んでるんだけどどう?」と誘われ、喜んでいく。

いやいや、「ごめん、金ないから」でしょ、啄木。で、最後の5000円を使い切る。

いやー、この豪快さというか後先考えなさはすごいですね。僕も最近これに近く

はあります。6,7月で300万デバイスと旅行に使い込んでしまいました。また、12

分割ではありますが、別途200万使ってしまったので、2か月で500万使ってしまった。

とはいえ、僕は9月からはもうほとんどお金を使わないこれまでの僕に戻ります。

まだ完ぺきではありませんけれども、90%以上欲しい若しくは取材目的で検証

したいデバイスは買い切りました。この2か月でアマゾンから荷物が100以上届き、

先々週まで部屋は空段ボール箱で埋まっていました。先週の土日に一気に片付け

部屋は元に戻りましたが、いやぁ買った買った。でもいい本が書けそうです!

脱線しました。

28日はとりあえず仕事したけど、29日は電車賃もなく、さぼり。小説書きに勤しむ。

ほんと一発狙いな啄木。

30日にまた金田一君から2円50銭、つまり12500円程度を借りる。金田一君が

いなければ啄木はおそらく下宿も追い出されていたのでしょうね。。。

「必要は発明の母」という格言がありますが、もしかすると、啄木にとっては、

「生活苦が創作の母」だったのかもしれませんね。僕にとっては、

「ポジティブ感情が創作の母」ですw

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