二十日 火曜日 廊下でおつねが何か話している。その相手の声は予の未だ聞いたことの ない声だ。細い初々しい声だ。また新しい女中が来たなと思った・・・それは 七時頃のこと・・・この日第一に予の意識にのぼった出来事はこれだ。 うつらうつらとしていると、誰かしら入って来た。「きっと新しい女中だ。」・・・ そう夢のように思って、二三度ゆるやかな呼吸をしてから眼を少しばかり開い てみた。 思ったとおり、十七ぐらいの丸顔の女が、火鉢に火を移している。「おさださん に似た、」とすぐ眼をつぶりながら、思った。おさださんとい ...